『OPTION B』 シェリル・サンドバーグ (著), アダム・グラント (著)

人生において、オプションA=最善の選択、で物事は進むことは稀有で、大抵の場合、オプションBで事は進んでいく。望まざることが起きた時、どう振舞うか、どう立ち向かうべきか。そんな観点から、本書のタイトルは『OPTION B』と銘打たれている。

僕もそうだったが、著書の一人であるシェリル・サンドバーグを少しでも知っている人であれば、その名前と”OPTION B”というタイトルが表紙に並記されていることに、少なからず違和感を覚える。

ハーバード大学を卒業し、facebookのCOOを務め、多額の資産を保有し、自伝『LEAN IN』がベストセラーとなり、容姿も端麗。”B”の要素が何もない。

どこが?という気持ちを抱くとともに、正直なところ、何だか厭味なタイトルだな・・・、とすら思った。

例えるなら、福山雅治に「小林、男にとって外見なんてどうでもいいっしょ。やっぱりハートだよ、ハート」と言われた時のような(ご本人はそんなことは絶対に言わないと思いますが。というよりも、そもそも話をする機会など訪れないと思いますが)感じ。

それでも、著書名とタイトルのそのギャップに興味を惹かれ、購入をした。

結果としては、『OPTION B』というタイトルは、上から見下したようなタイトルではなく、彼女の本心、本音からのものであることがよく理解できた。

サンドバーグが家族や友人たちとメキシコに旅行中、夫であるデイヴ・ゴールドバーグが突然倒れ、そのまま死に至る。近しい人の死に遭遇した人が誰でも陥るように、彼女もその死を受け入れることができず、嘆き、沈み、立ち上がろうともがくが、浮き上がることができない。

ただ、やはりサンドバーグだな、と思うのは、彼女は時の流れていくのを受け身で待つのではなく、そうした事態に陥った時に、どのように考え、どのように振る舞えばいいのかを、能動的に調べたり聞いたりすることで、時の流れに頼らず、自分自身の力で悲しみを圧しようとした。

そのことは一定の効果を生むが、本書が出版された時点でも、完全に死の悲しみをコントロールすることはできていない。そのことに、僕は好感を覚えた。

いろんなことがあったけれど、今は死の悲しみを乗り越え、強くなりました、みたいなストーリーであれば、そもそも、こうして書評を書こうとは思わない。

本書は、同じような体験や逆境にある人に対して、私もこんなことがありましたよ、と気持ちの面で励ますだけではなく、論理的にこういう考え方をするといいですよ、こんな行動がおすすめです、といった感じで、マニュアルのように具体策も記載されている。

だから、本来であれば、<〇〇ダイエットで楽して激ヤセ!>みたいなノリに持っていったほうがいいのだろうが、彼女はそうはしていない。かつてよりは受け入れられるようにはなったけれど、まだ立ち直れていないの・・・と率直なところを吐露している。だから、この本は、信じられると僕は思った。

 

少し話がそれるが、僕は、わりと物事を前向きに捉える質なので、物事が発生した当初は「OPTION Bだな・・・」と思ったことでも、時間を経るにつれ、いつか、それがいつになるかはわからないが、”OPTION A”に転嫁すると思っている。思っているし、真理として、そうだと信じている。

ただし、死は、例外だ。どれだけ時が移ろうが、”OPTION A”にはなり得ないと思っている。そうなってほしいな、と思うこともあるが、ならないだろうし、なってはいけないとも、思う。

「オプションAはもう選べない。だから、オプションBを大いに楽しもうよ!」

文中に、友人からかけられた言葉として、このような言葉が出てくる。
そう。そうだと思う。

僕はサンドバーグのように体系的に考えたり、可視化したわけではないが、不可変の”OPTION B”に対峙した時、できうることは、変わらないことを知ること。それだけだと思う。少なくとも、僕には、それ以上のことはできない。

 

シェリル・サンドバーグの著書ということで、『LEAN IN』のような、いわゆる”ビジネス書”を期待するなら、少し肩透かしをくらうかもしれない。でも、そういう人こそ、ビジネスファーストで生きている人こそ、読んだ方がいいのでは、とも思う。

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて会社員として勤めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)