速いものは美しい

仕事において何が一番重要か?と問われたら、やはり、「スピード」と僕は答える。
人それぞれだろうが、僕はそう思う。

仕事において重要な要素は、論理的思考力、発想力、行動力、期日意識、コミットメント、執着力、計画力、細分化すれば無数にあるが、突き詰めて大別すれば、「質」と「スピード」の2つに分けられる。

前者の向上のためには知識や能力が必要とされるが、後者はそうではない。後者に必要とされるのは”意識”のみ。完成度はさておき、早くやろう!と意識すれば、できる。

つまり、こういうことだ。「質」を高めるためには、知識・能力が必要であり、それらの向上には時間を要するが、「スピード」を高めるために必要とされるのは意識のみであり、時間を要することなく、向上の余地があるということだ。ならば、「スピード」に専念するのが得策なのではないだろうか。

以前勤めていた会社において、物事を新しく始めようとするときは、必ずといっていいほど、全体設計は?整合性は?勝算は?みたいなことを問われた。山羊座のA型で小心者の僕は、しゃらくせえ!と啖呵を切ることもできず、「・・・はい、考えます」と従順に答えていたが、今振り返ってみても、やはり、しゃらくせえ!と思う。

置かれている業界や立場などによって発想が異なるのは理解できるが、今のご時世、全体設計や整合性云々について頭を悩ませているうちに、他社に先んじられてしまう。勝算?やれば、わかる。

 

そうは言っても、僕も、最初から「質」を放棄していたわけではない。「質」を最重視していた時期もある。ただ、ある時に、すっぱりと止めた。止めた、というか、あきらめた。

30歳の頃、僕は会社員として働きつつ、経営学を学ぶため、ビジネススクールに通い始めた。やったるぜ!経営学を学んで、MBAを取得して、バリバリ働くんだ!そう鼻息を荒くしていた。

ただ、鼻息が吐息に変わるのに、そう時間はかからなかった。周りの人たちの賢さに圧倒された。知識量も、頭の回転も、積極性も、すべてが違っていた。あ、これはダメだ・・・。あきらめた。

それでも、3年間通い、卒業はしたものの、「質」で他者に勝ろうという意外はきれいさっぱり失せていた。違うところで勝負しようと思った。それが、「スピード」だった。
「スピード」に関しては、生来のせっかちな気質も手伝い、わりといい線いってるのではないか、という自負があった。

ビジネススクール卒業と同時に今の会社に入社を、スピード最重視で物事を進めてきた結果、今では執行役員を務めさせてもらったりもしているので、その判断は悪いものではなかったのではないかと思っている。

自分の価値観を他者に押し付けるのはあまり感心しないものの、自分がスピード重視で仕事をしてきたものだから、つい、他者に対しても同様の価値観を求めてしまうところがある。

今年の4月に新入社員が入社をしてきたのだが、新人研修を受け持った際、「資料作成でもメールのレスでも、質はそこそこでいいから、とにかく早く終わらせることを意識するように。遅いのは悪だ!」と説いた。

自分としては、いいことを言ったな、と悦に入っていたのだが、研修から数日経ったある日、ある社員に言われた。

「今年の新卒、揃いも揃って、みんな仕事が雑なんですよね。適当な感じでさっさと出してくるんで困っちゃいます。早ければいってもんじゃないのに・・・」

あ、絶対僕の影響だ・・・。そう確信をしたが、雰囲気的に言い出すことができず、

「・・・困ったもんだね」

と、つぶやくように言った。

 

冒頭に記載した通り、仕事において何が一番重要か?と問われたら、「スピード」と僕は答える。
ただ、質も、まあ、それなりに大事にね・・・、と付け加えておこうとは思う。

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて会社員として勤めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)