聞き上手はモテる!?

先日、代筆業について取材を受けていた際、「今まで、クレームは何件くらいありましたか?」という問いを受けた。

あらためて考えたことはなかったが、頭をめぐらせてみると、約50件の依頼の中で、ふざけるな!金返せ!といった類のクレームは1件だけだったので、「・・・えーと、1件ですね」と答えたところ、「1件?すごい少ないですねー」と驚かれた。

そうかな?まあ、そうか。多い少ないを意識したことはないが、確かに、ラブレターのように人の感情を扱う仕事において、1件というクレーム数は少ないかもしれない。

「どうしてそんな少ないんです?」
「どうして?・・・うーん、まあ、それだけ質が高いんでしょうね」
「ははは、そうなんですねー」

問いに対しての適切な答えが自分の中になかったため、その場は冗談にして流してしまったが、大事なことだと思ったので、取材を終え、ひとりになった時に、真剣に考えてみた。
そして思い当たったのは、対面でしっかりと話を聞いているから、ということ。絶対的な正解とは言い切れないが、見当違いではないと思う。

僕がラブレターの代筆を請け負う際、まずはじめることは、直接お会いしてお話を聞く、ことだ。遠方にお住いの場合はメールや電話でやり取りをするが、お会いできる場合は、直接お会いして、依頼の背景を直接聞くようにしている。

僕もそうだが、恋愛に関することは、特に男性の場合は近い友人に相談をしたりするということがないため、想いが溜まっており、ここぞとばかりに僕に吐き出す。依頼者に対する想い。どこが好きか。どれだけ魅力的か。どうしたらいいか。とめどなく言葉が出てくる。

通常は1~2時間で終わるが、最長で5時間、話を聞いていたこともある。一方的に話を聞くのって大変じゃない?と訊かれることがあるが、全然、大変ではない。昔から、人の話を聞くことは苦にならない質だった。

人が好き、とか、人の話に興味がある、というよりも、自分が自身の考えや想いを話すのが苦手だったので、その分、結果として聞き役に回ることが多かっただけのことだ。

不思議だったのは、自分のことを話すことなく、ただ、「へー」とか「ほー」とか、「それでそれで?」などと相槌を打つことに徹していると、そのうち、「小林くんに話すと何だか落ち着く」「小林くんって包容力ありそう」などと、過分な評価を受けることがちらほらと出てきたことだ。

そんなことが続くうちに、世の中的には「話す」「伝える」ということばかりが注目されるが、「聞く」ということもひとつの武器たり得るのかな、と思うようになった。

程度の差はあれども、誰しもが少なからず、自己顕示欲や承認欲求のようなものを持っていて、「僕はね・・・」「私ってさ・・・」と自分のことを話したがるし、自分のことを知ってもらいたいと声を張る。だからこそ、自分を語らず、相手に語らす「聞き役」は重宝されるのだろう。

だから、好きな人はいるのだけれど、どうやって話したらいいんだろう、と思い悩んでいたり、好き嫌い関係なく、そもそも人と話すことに対して苦手意識を持っている人は、自分から話したり伝えようともがくのは止めてしまえばいい。そうでななく、相手の話を聞く、ということに専念をしてみたらどうだろう。自分から話さなくていいのだから、ずっと楽だ。

どうやって聞けばいいかって?単純だ。
「へー」「ほー」「ふーん」とつぶやきながら、頷けばいい。たまに、「それでどうなった?」と言葉を促すと、なおいいだろう。

難しいことは、何もない。
さあ、「聞いて」みよう。

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)