『ボクたちはみんな大人になれなかった』 燃え殻 (著)

著者の燃え殻さんとしては、あまり嬉しくないコメントかもしれないが、内容もさることながら、『ボクたちはみんな大人になれなかった』というタイトルと、燃え殻、という名前が、とても良い、と思った。

世の中に”大人”と呼ばれる人がどれくらいいるのか、そして、そもそも”大人”の定義がなんなのかもよくわからないが、僕も含めて、大半の”大人”は、自分のことを”大人”とは思っていない気がする。

それは、知識や経験こそ増えども、考え方や心の持ちようの成熟度という点では、十代の頃からさして変わっていない、ということもあるし、若い頃の想いや憧れ、後悔の余韻がいつまでも残っている、という意味でもある。

だから、『ボクたちはみんな大人になれなかった』というタイトルには、誰しもが共感を覚えるところがあるのではないかと思う。

しかしながら、これが、熟練のプロの作家の手によるものだと、なんだかあざといタイトルだな、と顔をしかめたくなるが、そうではない、しかも、”燃え殻”という名前なんだかなんだかわからない、でも、妙に愛らしさを覚える著者によるものということで、厭味にならず、素直にこのタイトルを受け取ることができる。

ここで勝負あり。そのあとは、「やっぱりみんなそう思っているんだな・・・」「ちっとも大人になってないな・・・」という感慨に耽っているうちに、最後の頁まで読み進めてしまう感じだ。

また、これはごく個人的な想いになるが、本の「作り」に対してもとても共感をした。ここでいう「作り」というのは、ページ数や構成のこと。

おそらく、本書の要素量からすると、手練れた作家であれば、エピソードを小出しにして、3~4冊書くことができるのではないかと思う。それだけ「詰まって」いる。

僕が出版させていただいた時もそうだったのだけど、きっと、著者である燃え殻さんも、現時点では1つの要素を膨らませて物語を展開させるほどの技量はなく(偉そうに言って大変スミマセン)、また、そもそもとして、そうしようとする計算や打算もなく、ただただ、自分の中にあるわだかまりや喜び哀しみ、後悔、あきらめ、そういったものをすべてこの1冊に吐き出したかったのだと思う。

それでも、出し切ったとしても、ページ数としてはそう多くなく、だからこそ、すべてを凝縮したことが感じ取れて、指でふわっとつまめるほどの本の厚みに、すごく共感をした。

僕は今38歳。過去を振り返ることなく、今と未来にのみ目を向けることが大事とわかりつつも、過去に交差した誰かに逢いたくて、今や未来よりも過去の方があたたかい気がして、ふと後ろを向きたくなる。ちょうどそんな時だった。良いタイミングで、良い本を読んだ。

 

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)