一番臆病で、一番勇敢な人たち。『72時間ホンネテレビ』を観て。

先日AbemaTVにて放映された、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の元SMAP3名による『72時間ホンネテレビ』。放映前、放映中、そして放映後、とずっと話題になっているが、例にもれず、僕も、観た。といっても、すべてあますところなく観たわけではなく、累計して15時間くらいのものだろうか。全体の20%くらいだが、それでも十分に感じるところがあった。

 

『何かを始めるときの自分が、一番臆病で、そして一番勇敢だ』

吉田修一の『Water』という小説に出てくる一節。僕は、この言葉が好きだ。そして、AbemaTVを見ながら、頭の中でこの言葉を反芻していた。まさに、3人は、少し不安げで、それでいて勇敢で、誇らしげで、さびしげで、でも、楽しそうで、嬉しそうで、とにかく、かっこよかった。

新入生でも新社会人でも新婚でも何でもいいのだが、何かを始めようとする人、新しい人のまとう空気感は、見ているだけで気持ちが高揚する。自信満々でもダメ。臆病なだけでもダメ。いくつかの感情が織り交ざるからこそ、あの空気感、色気のようなものは出るのだと思う。

ただ、もう一方で、少し暗澹たる気持ちになった。別に、キムタクと中居君がいないから、とか、SMAPが解散してしまった現実を直視せざるを得ないから、とか、そういうことではない。自分を省みて、焦りを覚えた、という意味だ。僕は、何かを始めようとする人ではないし、新しい人、でもないという事実を認識させられたからだ。

38歳。それなりに社会人生活も経験し、会社の中でもそれなりの役職にある。会社の中では社歴も長い方だし、歳も上の方だろう。社会人としての経験が長い分、知識が、とか、経験が、とか自分をごまかしていたが、72時間ホンネテレビでの3人を見て、否が応にも対峙せざるを得なくなった。新しい人ではない、自分と。

もちろん、新しければ即ち良しか、というとそうではない。古い人、経験者ならではの良さもあるだろう。ただ、物事を前に推し進めるのは、いつだって、未熟で、不安げで、でも勇敢な、新しい人たちだ。それは、歴史が証明をしている。賢い経験者は、新しい人へのアドバイザーとしてはよいが、自身が主役に躍り出ようとすると、老害にしかならない。

そう考えると、僕は、会社の、そして社会の前進を止めてしまっているのではないか、と思ってしまった。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、本心で、そう思った。

 

子供の頃からSMAPを景色のように当たり前に目にしてきた世代として、当然、今回の番組は嬉しかったし、3人の表情を見て安堵するところもあったのだけれど、でも、やはり、それだけではなく、「お前は何か始めてる?」と、突き付けられたような気がした、というのが、僕の、偽らざるホンネ。

 

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)