日曜日よりの使者 – 拝啓 松本人志様 –

このまま どこか遠く 連れてってくれないか
君は 君こそは 日曜日よりの使者

THE HIGH-LOWS『日曜日よりの使者』。
歌詞の内容、また、かつて日曜日には「ごっつええ感じ」と「ガキの使い」という2つのダウンタウンの番組が放送されていたことから、松本人志のことを歌った曲ではないかと言われている。

この歌は、それこそ日曜日の朝に口ずさみたくなるような明るい曲調で、歌詞もポジティブなものだけれど、僕は、この歌を聴くと、どちらかというと泣きたい気持ちになる。

別に悲しいわけではない。かといって、うれし涙というわけでもない。
なんだろう、言うなれば、感謝とか感激とか、その類だ。

甲本ヒロトにとって松本人志が、現実から離れ、どこか遠くに連れてってくれる使者であったように、僕にとっても松本人志は、かつて使者だったし、39歳になる今だって、変わらず使者だ。

 

ダウンタウンを最初に自覚したのは小学生の頃。3歳上の姉が「超おもしろい番組がある!」と教えてくれたのが「夢で逢えたら」だった。家族旅行で行った熱海の旅館ではじめて”ガララニョロロ”(すいません、大多数の方は?だと思いますが)を観た衝撃は今でも覚えている。それ以来、僕にとって熱海といえば、貫一よりも、お宮の松よりも、ガララニョロロだ。

それはさておき、そこから先はダウンタウンに文字通り”夢中”になった。ごっつええ感じ、ガキの使い、生生生生ダウンタウン、わらいのじかん、発明将軍ダウンタウン、ダウンタウン・セブン、ダウンタウンDX、松本紳助、一人ごっつ。欠かさず観た。そのうち、録画をして、繰り返し観るようになった。

小学校、中学、高校、大学、社会人と進むにつれ、笑ってばかりいれらない日々になり、時には笑う気力もない日もあったけれど、そんな時だって、悲しみや失意から引き剝がすようにして、ダウンタウンは、松本人志は、僕を笑わせてくれた。

流れ星が たどり着いたのは
悲しみが沈む 西の空

そして 東から昇ってくるものを
迎えに行くんだろ 日曜日よりの使者

歌詞の通り、太陽の昇る東へと、僕を連れてってくれた。まさに、使者だった。

なかでも、僕が好きだったのは、「放送室」というラジオ。松本人志と、幼馴染で放送作家でもある高須光聖がパーソナリティとして放送していたラジオを、欠かさず毎週聴いていた。「放送室」という名の通り、放課後に、学校の放送室でおしゃべりしているような内容、雰囲気に魅了された。

残念ながら全391回で放送は終わってしまったが、放送終了後も、1回~391回をベッドに横たわりながら、繰り返し繰り返し、聴いている。昨日も聴いたし、今日も、明日も聴く。もう何周したかわからない。391回目を聴く頃には、1回目がまた聴きたくなっているのだから、無限ループだ。きっと、70歳になっても聴いている。

 

30にして立ち、40にして惑わず。とは孔子の言。かなしいかな、39にして未だにふらふらと迷い、戸惑う日々だ。率直なところ、20代や30代前半よりも、今の方が戸惑うことが多い。それはきっと、人生の残りが見えてきたことも起因してると思う。

現状に不満はないし、幸せだと思う。でも、それでも、ガララニョロロやアホアホマンで笑い転げていた頃の僕が、10代の頃の僕が描いていた未来かというと、ちょっと違う。こんな風に人を笑わせたい。楽しませたい。嫌なことを忘れさせたい。そう思っていた頃の僕が、今の僕を見たらどう思うだろうか?「がんばってるね」と声を掛けてくれるだろうが、それ以上の言葉は特にないだろう。

もしかしたら、夢は叶わないかもな。いつからか、そんな考えが頭をよぎることが増えた。まあ、でも、みんなそんなもんだよね。と自分を納得させることが増えた。そんな思いを抱きながら、夜、ベッドに入ることが増えた。

そんな夜でも、放送室からは、希望に満ちた笑いが流れてくる。

たとえば 世界中が どしゃ降りの雨だろうと
ゲラゲラ笑える 日曜日よりの使者

気がつくと、妻と子供が寝息をつく横で、ひとり、笑いをかみ殺している。
夜な夜な、日曜日よりの使者が、僕を、どこか遠くへ連れ去ってくれる。
そしてまた、やってみるか、と思わせてくれる。

 

最近、テレビが面白くない、テレビはオワコンだ、という声を耳にすることが多い。テレビに出ている人間自身がそう口にして、テレビ以外の場所に活動の場を移したりもしている。

テレビがオワコンなのかは僕にはわからないし、テレビ以外の場に活路を求めるのも好きにすればいいと思う。

でも、松本人志は、僕の使者は、今日だってテレビの中心におさまり、逃げずに、ブレずに、適当な嘘をついて、その場を切り抜けて、誰一人傷つけることなく、笑わせている。

相変わらず、超かっこよくて、超おもしろいのだ。

 

 

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)