約5年前からラブレター代筆の仕事をはじめ、先日に代筆件数100件を超えた。
「100」という数字だけ見ると随分と多い印象だが、5年間かかっているので、月換算だと1~2件に過ぎない。それに、毎月コンスタントに来ているわけではなく、4,5件まとめて来たと思ったら、3か月くらい何も来ない、ということもある。
だから、僕の実感としては、数多くやったな、というよりは、長くやってきたな、という方が正確だ。まさに、塵が積もり積もって100件になったという感じ。
「会社員をしながらするのは大変じゃないですか?」と問われることがあるが、特に大変と思うことはない。基本は会社員としての日々を過ごし、週末になれば家族と遊び、代筆の依頼が来たら、隙間をぬって依頼者と会い、手紙を書くだけ。生活のリズムが変わるほどのものではない。ラブレター代筆は、「仕事をする」「家族と遊ぶ」と同列の、日常だ。
冒頭に書いたように、100件という数字に大きな感慨はないが、ラブレター代筆をはじめてから本日の5年間までの日々には思うところがある。
父が新卒から40年近くを過ごしてきたテレビ局を定年退職し、母が病気を患い、僕は現在勤める会社にて取締役へと就任し、2人目の子供を授かったりもした。まさに、流されるように刻々と状況が変化していく。ひとつところに留まることはできないのだということを、否が応にも痛感させられた。何者かに「ここから出ていけ!歩け!」と言われている気がした。
そんな中、ラブレター代筆だけは、いつもと同じだった。いつものように、想いを伝えることに踏ん切りがつかない人、別れた彼氏・彼女への想いが断ち切れない人、とにかく誰かに相談したい人。そういった人たちからの依頼が、ぽつぽつと届き、こつこつと僕は書いた。
変化が迫られる中で、変わらないものがあるということはありがたかった。ラブレター代筆の仕事をしていたよかった、と思った。
はじめた当初は5年も続けると思っていなかった。1,2年もしたら終わりだろうと思っていた。
だが、最近、思う。もしかしたら、10年、20年、その先、死ぬまでやっているかもしれないな、と。
結構、この仕事が気に入っている。