僕が代筆を引き受ける際、依頼者と「会える」ことを条件にする理由

僕は、ラブレター代筆を引き受ける際、<東京近郊で直接お会いして、依頼の背景やお相手への想いを聞くことができる方>であることをお受けする前提としている。

はじめた当初からそうだったのではない。変更したのは2ヶ月ほど前から。なぜそうしたのかというと、これはこの仕事をはじめてしばらくしてから気づいたのだが、依頼者は、僕に代筆だけを期待しているのではない。それと同時に、「自分の内なる想いを聞いてもらいたい」という欲求を抱いているから。

近しい友人や知人には話にくいけど、誰かに、聞いてもらいたい。多くの依頼者からはそういう想いを感じる。だから、カフェにて対面し、1~2時間ほどのヒアリングを終えると、空腹時にご飯にありつけたような安堵の表情を浮かべる依頼者が多い。だから、僕は直接会えるかどうかを重視する。

当然のことながら、効率性で考えたら、メールや電話でやり取りをした方がはるかに楽だ。それに、僕は普段は会社員として働いているため、会う時間は19時以降になる。自分で好んでやっているものの、仕事のあとに仕事は、時につらい。


今年のはじめに九州に住む方から依頼があった。その時は直接会えなくても引き受けていたため、メールでヒアリングをさせていただいた。2回ほどメールのやり取りをしたのち、文面を作成し、納品をした。結果、修正なし。1回で終わり。

いや~、効率的だったなぁ。と内心微笑むとともに、あれ?と思った。あれ?効率とか収益とか、いわゆる「ビジネス的なもの」から離れたくてこの仕事をはじめたのに、結局単なる「副業」になってる。そう気づいた。 だから、止めた。効率だとか、収益性だとか、そういったものに舌を出し、指を突き出す、はじめた当初の気概に戻るために。

それにこの仕事の醍醐味のひとつは、今までの自身の歩みの延長戦上では出会えなかった人、触れることのなかった人生と交わることだ。メールや電話で完結させてしまっては、自らその醍醐味を手放すことになる。


そう心をあらためたつい先日、こんなメールが来た。
「~千葉の木更津まで来てもらうことはできますか?そうそう、<木更津キャッツアイ>の木更津です」
東京近郊といえばいえなくもないし、行けるか行けないかでいえば、行けないことはない。

”東京近郊”の定義をもう少し明確にしよう。
会社帰り、木更津へと向かう電車に揺られながら、僕はそう意を固くした。



小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)