『東京笑芸ざんまい』高田文夫(著)

高田文夫、いや、高田先生がすきだ。
ちょっと前まで週に10本ほどラジオを聴いていたが、今は、2本だけ。『爆笑問題カーボーイ』と『ラジオビバリー昼ズ』(正確に言うと、ラジオビバリー昼ズは、高田先生がパーソナリティを務める月・金のみ。他曜日の皆さん、申し訳ありません)

かの立川談志は「落語は忠臣蔵の(討入りした)四十七士じゃなく、逃げちゃった残りの赤穂藩士二百五十三人が、どう生きるかを描くもんだ」と述べたが、上記2番組だけは、逃げちゃった残りの赤穂藩士である僕を、あたたかく迎えてくれる包容力を感じる。だから、聴いている。

こう書くと、随分と昔から高田先生をお慕い申し上げているように聞こえるかもしれないが、正直なところ、ファンになったのは割と最近の話だ。

一番初めに高田先生の存在を認知したのは、フジテレビの深夜で放送していた『北野ファンクラブ』だったと記憶している。といっても、なんかやたら笑ってる人いるな、くらいのおぼろげなものだ。

次に高田先生を目にしたのは、ぐぐっと時が過ぎ、戦後の渋谷を生きた伝説のアウトロー花形敬を取り上げた本田靖春のノンフィクション『疵』の中だ。もちろん、本の中なので、目にしたのはその姿ではなく、そのお名前。渋谷生まれだった高田先生が子供時代、花形に可愛がってもらった、というような記述だったと思う。

それ以降、浅草キッド、爆笑問題、たけし、好きだった人を追いかけていくと、高田文夫、の名が自然と彼らの口から発せられる。高田文夫とは?何者?気になり、『ラジオビバリー昼ズ』を聴き、すぐにファンになった。

「軽妙にして洒脱。誉められるなら、これが一番の言葉だ。」本書の中で先生はそうおっしゃっているが、まさに、軽妙。まさに、洒脱。初夏に着流しで街を闊歩するような涼やかさ。惚れた。

余談だが、先日よみうりホールでおこなわれた『ラジオビバリー昼ズ』の30周年イベントも、当然観に行った。前から4列目。高田先生のギョロ目に手が届きそうな距離。笑いを感動が上回る。ちなみに、松村邦洋の貴乃花親方のモノマネを至近距離で見るという眼福にもあずかる。

話を戻す。
普通、本は「読む」ものだが、本書の場合、そうではない。高田先生の「口上を聞く」という感覚だ。文体というよりも語り口。文章というよりも講談。そんな感じ。また、登場人物も永井荷風からみやぞんまで幅広い。

「年寄りが一人死ぬと、図書館10館が潰れたのと同じ」と本書にあるが、(高田先生はまだご健在だが…)まさに図書館のような知識。文化遺産に登録されてもおかしくないほど貴重な話に溢れている。

読後感がまたいい。普通、小説でもノンフィクションでも、余韻を残すような終わり方をするが、江戸っ子の高田先生はそれを良しとしない。照れなのか、性分なのかはわからないが、喋るだけ喋ったら、客席に向けて「じゃあ、まあた」という感じで少し手を挙げて、去っていく。粋だ。

そういえば、文中、高田先生が眠られる予定のお墓は今戸にあると書いてあった。僕が入る予定のお墓も今戸だ。あの辺りの墓地といった限られている。きっと、同じ場所だと思う。

母に会うことの他に、死後の楽しみがひとつ増えた。


小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)