別れるための手紙の書き方講座

僕のもとには、「好きな人とつき合うための手紙を書いてほしい」という依頼もあれば、それとは逆に、「つき合っている人と別れるための手紙を書いてほしい」という依頼もある。

別れるための手紙、というのは気が進むものではないが、ただ、別れ方を間違えると、相手がストーカー化してしまい、殺人事件にまで展開するなんてこともあり得る。だから、揉めることなく、円滑に別れられるよう、引き受けることにしている。

もちろん、書くべき内容は状況によって異なるのだが、参考までに、別れるための手紙のサンプルと、ポイントを今日は紹介しようと思う。別れたいんだけれど、どう切り出していいかわからない。別れる勇気がない。そんな方の一助になれば。


▼サンプル
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ツネくん、手紙なんか送るのはじめてだから驚いたかな?
文章を書くのは得意じゃないし、はっきりしないのは好きじゃないので、率直に伝えるね。この手紙を最後に、ツネくんに連絡をするのは最後にしたいんだ。そう、お別れしたいの。自分から付き合ってって言ったり、自分から別れたいって言ったり、最後まで自分勝手でごめんね。

ただ、勘違いしてほしくないのは、他に好きな人ができたわけじゃないよ。ただ、今はツネくんより、大事にしたいものがあるんだ。美容師としての仕事に集中したいの。きっと、恋やデートはいつだってできると思う。おばあちゃんになってもできる。でも、美容師として、勉強したり、成長したりするのは、今だけだと思う。25歳の今。

ツネくんには、私がどれだけ美容師に憧れていたか、ずっと話していたよね。
だから、ツネくんなら、私が好きになったツネくんなら、きっと私のわがままを聞いてくれと思うんだ。そうだよね?

ジメジメしたのは嫌いだから、この辺で終わりにするよ。最初に書いたように、この手紙が最後。電話もLINEももう返さないけど、ごめんね。ツネくんが早く私を忘れられるように、次に進めるようにするには、それがいいと思うんだ。

じゃあね、ツネくん。ばいばい。

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では、ここからは解説。
別れるための手紙を書く際に、意識すべきポイントは大きく3つ。

1.「他に好きな人ができた」はNG

「他に好きな人ができたから」と言って、別れを切り出したことがある人は少なくないと思う。個人的には、これはオススメしない。事実だとしてもやめた方がいい。言われた側からすると、捨てられた、という劣等感を抱くとともに、”新たに好きになった相手”への嫉妬心も生んでしまう。要は感情がこじれてしまい、別れ話に素直に応じるのが難しくなる。それならば「あなたのことが好きじゃなくなった」と伝える方がまだいい。

そして、僕が推奨する伝え方としては、上記サンプルにあるように、「仕事に専念したい」「夢を追うことに集中したい」という形で、話の軸を変えてしまうことだ。たとえば、想像してほしいのだが、自分が働いている会社からリストラを宣告されたとする。その理由が、「きみは営業成績がよくないからクビね」と言われたら、きっと腹が立つはずだ。納得しがたいだろう。でも、こう言われたらどうだろう。「業績不振により、会社が倒産することになったので」。もちろん、悲しいことは悲しいだろうが、全社よりは納得がいくはずだ。なぜなら、そもそも会社が無くなってしまうのだからどうしようもない。

「仕事に専念したい」「夢を追うことに集中したい」も、理屈としてはこれと同じ。そもそも、恋愛を止めます、と言ってしまえばいいのだ。これならば、相手としてもあきらめざるを得ない。

2.相手を持ち上げる

これは対男性の場合だが、サンプルに書いたように、「だから、ツネくんなら、私が好きになったツネくんなら、きっと私のわがままを聞いてくれと思うんだ。そうだよね?」と持ち上げるのは有効だと思う。僕も含めて、男ってやつは愚かな生き物なので、別れ際でもかっこつけたがる生き物だ。だから、こう言われてしまうと、「お、おう。当たり前だろ」と反応してしまう。また、こう言ってあげることで、”彼女にフラれた自分”ではななく、 ”彼女を応援してあげる自分”に変換をすることができるようになる。つまり、プライドを保つことができる。これは、男にとって重要なポイントだ。

3.長々と書かない

誠実に対応しようとするあまり、長々と文章を書いてしまいたくなるかもしれないが、それは止めた方がいい。あまりに真摯に書きすぎると、「まだ自分に気持ちがあるのでは?」期待を持たせてしまうことにつながり、別れにくくなる可能性がある。だから、今まで時を共にしてきた相手への感謝の念は持ちつつも、サンプルの文章くらいの長さにとどめ、ささっと終わらせるのがいいと思う。やさしさは必要だが、時に、逆効果になってしまう。


こんなとこだろうか。
最後に、僕が言うのもなんだが、直接話せる状況にあるのであれば、手紙ではなく、直接伝える方がいいと思う。
最後くらい、直接、さよならを言おう。


小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)