「恋の必勝テクニックは?」と問われたら

ラブレターの代筆をはじめてから6年近く経ち、100通以上のラブレターを書いてきた。そういうと、確実にハートを射止めることができる一発必中の凄技を持っているのではないか。そう思われることが多々ある。

メディアの取材などを受けると、記者の方が、手帳を開き、ペンを片手に、僕を凝視する。「さあ、お願いします」と待ち構える。

困る。なぜか?一発必中の凄技を持っていないから。
告白、プロポーズ、復縁、感謝等、依頼の種類ごとの基本構成や、こういう言葉や表現を用いると、受け手にこう感じてもらえるのではないか。今まで請け負った依頼をもとに、それらを情報としてまとめてはいる。だが、それらが一発必中かと言われればそうではない。ただの仮説。もっというと、自己満足。

正直なところ、自分には他者にはない独自のメソッドがある。そう考えていたこともあった。だが、意にそぐわない失敗、思いがけない成功を繰り返す中で、それが単なる過信であることに気付いた。冷静に考えてみれば、当たり前のこと。僕が相手にしているのは、人間。機械ではない。そこに決まったパターンはない。千差万別。十人十色。

シチュエーションとしては似ていても、想いを伝える人、想いを伝えられる人は毎回異なる。必中、必勝などあるわけがない。

「恋の必勝法、あります!」と豪語した方がいいことはわかっている。ペンを握りしめる記者さんをがっかりさせることもないし、『ラブレターの伝道師が教える、10の必勝テクニック』という本の出版打診が来る可能性もある(実際、そんな類の話が来たこともある)。でも、残念ながら、今のところは見つかっていない。


必勝法がないのであれば、では、僕の存在価値、ラブレター代筆屋の価値はなんなのか?そういう話になるだろう。必勝ではないが、恋が成就する確率をぐんと上げることはできる。

告白してもいいのだろうか?フラれたらどうしよう・・・。
そう思い悩む人に、僕はこう声を掛けることができる。

きれいな字でも、汚い字でも。小さな声でも、大きな声でも。
なんでもいい。とにかく伝えてみよう。「好き」と。

そうすれば、伝えないよりも、はるかに成功確率が上がる。
その後押しをする。それが、僕の存在価値。そう思っている。

小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)