はじめてのラブレター代筆

僕がラブレターの代筆屋をはじめてから、かれこれ5年以上が経つ。
現時点で100通以上のラブレターを代筆してきた。
当然のことながら、いきなり100通になったわけではなく、まずはじめに、1通目の依頼があり、そこから今日に至る。


「文面はこちらで考えるので、文字だけ書いて頂きたいです」

それが最初の依頼。

文字だけ書く?
はじめて来た依頼に小躍りしつつも、首をかしげた。

<代筆屋>の看板を掲げてはいるものの、それは内容を代わりに考えるという意味であり、文字を代わりに書くという意味ではない。それに、僕は字が汚い。役所で”小林”と自分の苗字を書いたところ、「山本様ですね」と返されたくらい悪字だ。

「ご依頼頂きまして誠にありがとうございます。ご確認なのですが、内容は○○様に考案頂き、私は頂戴した内容を手紙に書き写すだけでよろしいのでしょうか?」

そう返事を返した。
そのままの流れで、やんわりとお断りをしようとした。

5分後、返信が届いた。

「病気の影響で上手に字を書けないため、代わりに字を書いて欲しいのです」

メールには、そう書かれていた。
それ以上問うのは止め、僕は引き受けることにした。



翌日、依頼者から代筆すべき文面が送られてきた。
LINEで完結するようなごくごく短い文章だ。

清書を終えた僕は、仕上がりが問題ないか、手紙の写真を取り、依頼者に送った。

「手紙の作成ありがとうございました。問題ありません」

はじめての依頼は、あっけなく終わった。


僕がこの仕事をはじめたのは、伝えたい想いはあるのだけど、考えがまとまらず、上手く伝えられない人をサポートするため。

でも、最初の依頼で知った。
考えがまらないとかではなく、想いを伝えることができない人がいることを。“想いを伝えられる”ということが、当たり前ではないということを。

もしあなたが、「好きです」と口にすることができ、「愛してる」と文字にすることができるのであれば、伝えない理由はない。

今すぐに伝えよう。
だって、それは特別なことなんだから。


小林 慎太郎

投稿者: 小林 慎太郎

1979 年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。IT企業にて役員を務めるかたわら、自身の言葉や文字で想いを伝えることに対して苦手意識を持っている人を支援するため、ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供する<デンシンワークス>(dsworks.jp)を運営。 <著書>『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(インプレス社)